雄大な大自然に抱かれた北海道美瑛町で視察研修を開催! (第2回酪青研国内研修報告)

8月2日から4日の3日間、北海道の美瑛町において日本連盟主催の第2回酪青研国内研修を開催しました。例年Ⅱ番牧草の収穫を控える8月上旬の道央圏は麦稈収穫作業の最盛期で、酪農家にとっても敷料確保に大忙しの時期でありますが、雄大な北海道の大自然を満喫して頂きたいとの想いを込めてこの時期に開催しました。今回は第1回の宮崎研修に引き続き日本連盟の檜尾委員長に団長をご依頼し、北海道協議会の小島会長や野口副会長にもサポートを頂く形で総勢11名の視察団が結成されました。初日は昼過ぎに旭川市内と旭川空港の2カ所で合流してバスに乗車した後、団長からのご挨拶と事務連絡等のオリエンテーションを交えながら視察先の美瑛町に向かいました。
美瑛町は北海道のほぼ中央に位置し、なだらかな波状丘陵と雄大で緑豊かな自然環境が魅力の町で「丘のまち美瑛」として全国的に知られています。基幹産業は麦、馬鈴薯、甜菜などの畑作農業で、酪農は農業の約5%程度を占めています。まず初めに訪れた「有限会社ジェネシス美瑛」は町内の比較的大規模な酪農家8戸で構成されるTMRセンターで、この日は麦稈収穫作業の合間を縫って代表の浦薫氏に施設概要のご説明を頂くことができました。
同センターは牧草地約330ha、飼料用トウモロコシ約250haの農地を一元管理する形で草地更新、肥培管理、収穫作業を請け負っており、収穫した粗飼料は配合飼料と混合し搾乳牛用(30㎏、38㎏、40㎏)と育成乾乳用の計4種類のTMRを調製、900㎏単位に圧縮梱包し構成員宅に2日に1回のペースで配送しているとのことです。また平成20年頃からイアコーンサイレージや子実主体サイレージの生産体系も組み込んでおり、栄養収量の増加とともに自給飼料率の向上を目標に掲げています。現在の供給体制における成牛換算数は約1,500頭、1戸あたり出荷平均乳量は約9,700tとのことで、更に1頭あたり乳量は11,700㎏と伺い参加者からは感嘆の声が聞こえました。
平成19年のTMR供給開始から今年で17年目を迎える当センターは、施設の老朽化による設備更新が課題のようですが、整然と管理された施設環境からはさほど経年の様相を感じることなく、「さすが北海道のTMRセンターは管理が行き届いているわ~」と参加者一同目を丸くしていました。当然これだけ大規模な施設を運営することは一筋縄ではありませんが、特に北海道のような大規模酪農を下支えする組織としてその意義と役割の重さを感じることができました。

TMRの生産体制を見た後は供給先の牧場ということで、浦代表が経営される「株式会社ベイリッチランドファーム」を訪問しました。この日の気温30度以上の晴天でしたが翌日は雨予報ということもあり、薫氏は急きょ麦稈収穫作業に向かったため視察案内は長男の怜央氏にバトンタッチしました。

同牧場は総頭数500頭(内搾乳牛240頭、育成牛260頭)、出荷乳量は約2,700tのメガファームで、歴代の繋ぎ牛舎やアブレスト牛舎にフリーストール&搾乳ロボットが加わり進化した牧場であり、TMRセンターからの飼料供給体制を軸に12,000t牛群を維持管理しています。早くから乳牛改良にも取り組んでおり、ハイインデックス種雄牛を6頭も輩出し、2019年8月にはGNTP(ゲノミック評価の総合指数)で全国2位にランキングするなど高い改良技術は目を見張るものがあります。
またこの牧場では酪農教育ファームにも取り組んでおり、地域の小学校への出張授業や牧場体験学習の受け入れなど、子供たちへの酪農の理解啓蒙と業界全体のイメージ向上を図る姿勢に、参加者一同共感を持ちました。怜央氏は道内各地やカナダの牧場実習の経験もあり、過去の経験談を交えて施設概要や飼養管理の手法について的確に説明する姿からは、弱冠20代後半という年齢を感じさせない酪農に対する強い情熱を感じました。最後は当牧場を象徴する巨大な看板をバックに記念撮影をして牧場を後にしました。

この日の夜は旭川市内に移動しホテルのチェックインを済ませた後、旭川市内の通称36(サンロク)街にある「石焼すてーき菊膳」に繰り出しました。嬉しいことに本日視察させて頂いた浦さん親子と地元美瑛の皆さん(真田副会長、JA美瑛の三木係長)も駆けつけて頂き、富良野和牛のコース料理を囲みながら楽しい夜を過ごしました。

翌日は天気予報通り朝から雲行きが悪く生憎の雨模様となりましたが、美瑛町内の観光スポットの「セブンスターの木」や「マイルドセブンの丘」を経由し、3か所目の視察先である「周東牧場」を訪れました。

北海道においては法人経営等で希に見かけるバイオガスプラントですが、同牧場は個人経営でありながら2015年に美瑛町で初めてこのシステムを導入した牧場であり、最初に牧場主の周東直輝氏に施設の概要について説明して頂きました。発電機の出力は50kwで発電量は1日あたり850kw、固定価格買取制度(FIT)による売電単価(約40円)で計算すると年間約120万円の売電収入(契約期間20年間→投資額2億円に対し約2億5千万円の収入)があるとのことです。(ちなみに住宅や牛舎等の電力は全て購入)

続いてバンカーサイロとフリーストール牛舎を見学させて頂きましたが、同牧場の飼養頭数は約230頭(内搾乳牛115頭)、年間出荷乳量は約1,300tで、この規模を4名の家族経営で運営していることに驚きました。特に草地面積は約100ha(草地65ha、デントコーン35ha)と広大で、年間の粗飼料給与量は殆どⅠ番草だけで充足し、Ⅱ番草は全て乾草やロールで販売している現状に参加者から驚きの声が上がりました。ただ美瑛町は北海道有数の寒冷地帯ということもあり、分娩房には床暖房設備が不可欠であるなど、厳寒期対策にはそれなりに苦労があるとのことです。
牧場視察後、車で5分ほどの「新栄の丘展望公園」にある牧場直営のアイスクリームショップに移動しました。この展望公園は美瑛町の丘陵地帯が一望できる高台にあり、綺麗に整備された花壇や牧草ロールのモニュメントがある観光スポットで、周東牧場では1996年からこの場所で直営の売店を運営しています。この日も大勢の観光客とともに行列に並ぼうとしたところ、図らずも周東さんが参加者全員にソフトクリームを振る舞ってくれました。(大変美味しかったです!)
周東牧場では個人経営ながらもバイオガスプラントの導入や6次化の推進など、新たな取り組みに果敢に挑戦する姿を見せて頂き、参加者一同多くの刺激を受けて牧場を後にしました。

いよいよ今回の研修も終盤に差し掛かり、あとは観光を残すばかりです。この日の昼食は地元で大人気のレストラン「フェルム・ラ・テール」でポークソテーのランチに舌鼓を打ちました。ここは外国人シェフが腕を揮う洋食レストランで予約が取りにくいとの事前情報もあり、一旦観光名所の「四季彩の丘」に立ち寄り、時間をずらしての来店となりましたが、地元の食材を使用した味わい深い料理とお洒落な雰囲気に皆大満足でした。
ちょうど昼食を終えた頃には運よく雨が上がり、午後の観光は特に今回の観光の目玉であった「白髭の滝」の絶景と神秘的な「青い池」をベストなタイミングで巡ることができました。その後は時間的に余裕があったため、野口副会長の提案で道の駅「びえい白金ビルケ」に立ち寄りショッピングを楽しみながら旭川市内に戻りました。
この日の夜は本日お世話になった周東さんや地元美瑛酪青研の皆さん(佐々木会長、真田副会長)にも同席頂く形で、和食の名店「天金本店」で最後の夜を過ごしました。実質的に翌朝は自由解散となるため、最後に檜尾団長のご挨拶で研修を締めて頂き、その後は36(サンロク)街のスナックや居酒屋で飲み直すなど、思い思いのスタイルで最後の夜を楽しみました。

 今回の国内研修は全国的に農繁期ということもあり参加募集や現地との調整に苦労しましたが、お陰様で皆様方のご協力により無事に終了することができました。特に開催地の美瑛町は大規模集約的な牧場が数多く存在し、早くからTMRセンター等の体制整備や搾乳ロボット、哺乳ロボット、バイオガスプラント等の先進技術が導入されるなど多種多様な経営形態が存在する地域であり、今回の視察を通じて多くの刺激を受けました。また悪天候が心配された観光プランも予想に反し好天下で満喫することができて良かったです。
最後になりますが、今回の研修会の開催にあたりご協力を頂きました参加者の皆様方、北海道協議会役員並びに協議会事務局の皆様に心より感謝を申し上げ、研修のご報告に代えさせて頂きます。
日本連盟事務局記