日本酪農青年研究連盟主催「第45回海外酪農研修」inヨーロッパ!
2026年2月10日(火)から16日(月)に、酪青研日本連盟主催の「第45回海外酪農研修」が開催されました。
本研修では、アイルランド(ダブリン)→ オランダ(アムステルダム) の2か国を巡り、EU酪農の政策・経営・現場の実態を多角的に学ぶ、大変有意義な行程となりました。
長距離フライト(14時間+乗継2時間+1時間)は体力的に厳しい部分もありましたが、現地での学びの濃さや参加メンバーの前向きな姿勢、そして国ごとの特色ある酪農現場のおかげで、日々新しい発見の連続でした。
【1日目:2月10日(火)】成田 →(アムステルダム)→ ダブリン
成田空港第1ターミナルに集合後、アムステルダムへ向かい、さらに乗継いでダブリンへ到着しました。
移動時間は乗り継ぎ時間を含めると合計17時間以上、深夜の到着となり到着時はやや疲れも感じましたが、無事にホテルへ入り翌日の研修に備えました。
【2日目:2月11日(水)】アイルランド・ダブリン市内研修
- Ibec(アイルランド経営者連盟)でのレクチャー
アイルランド酪農の政策・産業構造についてConor Mulvihill理事長より説明を受けました。
主なポイントは以下の通りです。・現在の生乳生産は、アイルランド930万kリットル、北アイルランド(英国)230万kリットル。
・2015年まで行われていたクオーター制度が廃止されて以降、生乳生産量は全世界の1%を占めるが、そのうち93%が輸出向けとなっている。
・このため、乳価は国内要因ではなく海外需要による変動を強く受ける構造となっている。
・経営形態は平均100頭飼養の家族経営が基本で、地域に根ざした生産体制が続いている。
・生乳は100%農協系へ出荷されており、協同組合モデルが非常に強固である。
・酪農業はアイルランドの農業分野の中で最も収入が高いと言われており、農家経済の中心的存在となっている。
・一方で、環境問題に対する非難の声も大きく、温室効果ガス削減など喫緊の課題を抱えている。特にメタン排出削減については社会的なプレッシャーが強まっているという。
・今後は日本のように機能性食品の開発・提供にも取り組んでいきたいといった展望も語られており、輸出依存型産業としての新たな価値創出を模索している点が印象的であった。アイルランドの酪農は、輸出志向の強さ、家族経営の持続、そして環境課題への対応という複数の側面が複雑に絡み合っており、今後の方向性を考えるうえで非常に参考となる内容でした。
特に温室効果ガスの削減対策では、EUでの取り組みでの反省点(牛を悪者にした)を踏まえ、日本が同じ轍を踏むことがないことを願うとの言葉があったのが印象に残りました。
- スーパーマーケット(TESCO等)自由視察
乳製品の棚割りの大きさ、牛乳価格の安さ(水より安価)、搾りたて牛乳の自販機など、日常生活の中で酪農がいかに根付いているかを実感できる視察となりました。
また、レクチャーでもあったが、植物性ミルクを「Milk」とは認めておらず、アーモンドミルクや豆乳製品にMilkの文字が無かったことが印象的であった。
【3日目:2月12日(木)】ダブリン市内 → アムステルダムへ移動
午前中はダブリン市内の文化的施設「トリニティ・カレッジ」「聖パトリック大聖堂」を訪問し、国の歴史と宗教観を理解することで、酪農の背景にある社会文化を学ぶ時間となりました。
午後の便でアムステルダムへ移動し、夕食後ホテルにチェックイン。
ここから景色も文化も大きく変わり、オランダでの本格的な酪農視察がスタートします。
【4日目:2月13日(金)】Captein農場・フローティングファーム視察
- Captein農場(ズーテルヴォーデ・グローネハート地方)
・チーズ工房を併設しており、チーズは数々の賞を受賞している。客足が絶えないほど人気である。
・チーズ工房では、昔ながらの木の樽を使ってチーズを製造している。
・チーズ工房は、2010年までは搾乳パーラーとして使用されていた建物を再建し、2023年に完成した。
・飼養頭数は250頭で、生産された生乳の8割をチーズに使用している。
・乳牛はフリージアン種(レッド)
・1頭あたりの平均乳量は30kgと生産性が高い。
・動物愛護の関係で、無許可で肉用種を育てることは禁止されている。
・チーズ製造時にできたホエーは別場所で飼育している豚に給与している。
・冬季期間の約半年間は、畑に糞尿を撒くことが禁止されている。こうした取り組みから、 Captein 農場は “伝統的チーズ製法” と “現代的な高生産性の管理”、そして “厳しい環境規制への対応” を組み合わせた、オランダの多機能な酪農経営の好例でした。
- フローティングファーム(ロッテルダム)
水上に建設された3層構造の牧場で、都市部での酪農の新モデルとして世界的に注目されています。・1層目:野菜生産(レタス)、チーズ熟成庫、2層目:乳製品製造、飼料製造、3層目、ロボット牛舎
・搾乳牛30頭、平均乳量22kg
・自動搾乳ロボット・自動給餌機を導入
・給与資料は、トウモロコシのDDGSの搾り粕のペレット、ビール粕、フレッシュオレンジジュースの搾り粕、グラスサイレージ
・年間3.5万人が見学に訪れる都市共生型モデル
・原料調達、生産、製造、販売をロッテルダム市内で完結させ、長距離輸送による環境負荷を発生させないというのがコンセプト(グラスサイレージは隣の町から買っているが)
・糞尿は固液分離後、固体は、プラスチックや建材に、液体は浄化して再利用。環境負荷軽減・都市住民との共存を実現した非常に興味深い施設でした。
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【5日目:2月14日(土)】ザーンセスカンス観光・アムステルダム市内観光
この日は文化・歴史に触れる日程でした。
風車村ザーンセスカンスで伝統的建築とオランダの水管理の歴史を見学し、昼食後にはアムステルダム市内観光へ行きました。
酪農だけでなく国の成り立ちや文化背景を知ることで、国ごとの農業政策の背景理解が深まりました。
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【6日目:2月15日(日)】自由行動 → 帰国便へ
午前中は自由行動。市内散策や土産購入など、思い思いに過ごしました。
その後、アムステルダムを出発し、翌16日に成田へ到着しました。
【研修全体を通して】
今回の視察では、アイルランド・オランダの酪農が抱える政策課題、環境対応、草地利用モデルと都市近接型モデルの違いなど、非常に多角的な視点で学ぶことができました。
また、食文化面ではパン中心の食事が続き、帰国前にはお米が恋しくなる場面もありましたが、料理そのものは美味しく、量も多く満足度の高い食事体験でした。
何より、参加メンバー同士の雰囲気が非常によく、移動中も情報交換が自然に生まれ、学びの多い充実した研修となりました。
【まとめ】
今回の研修は、アイルランドとオランダというEU酪農の中心地を訪れ、政策・技術・環境対応・文化など多面的に学ぶことができた非常に貴重な機会となりました。
現地の気候条件や社会制度に根差した酪農経営に触れることで、日本との違いを客観的に捉えられるとともに、今後に活かせる視点を得ることができました。
また、参加メンバー同士の関係性がとても良く、移動中も自然に意見交換が行われるなど、前向きな学びの場が随所に生まれました。こうした雰囲気が、研修全体の満足度をより高めてくれたように感じています。
そして、酪青研日本連盟の海外研修は 毎年実施している恒例行事であり、現場でしか得られない気づきや刺激が数多くあります。
海外の酪農を直接見てみたい方、仲間と一緒に学びたい方、新しい視点を得たい方には特におすすめの研修です。
次回は2026年秋に欧米での開催を予定していますので、ぜひ多くの方にご参加いただければ幸いです!















